こんにちは、ゆるカピです。
建築の地震による揺れと地震には、固有周期が関係しています。なので、耐震設計を考えるなら固有周期と振動の話は、絶対に知っておかないといけない内容です。
建築士試験の構造でも出題される話なので、自分は構造担当じゃないから知らないよと言わずに読んでみてください。
それでは早速始めます。
地震の慣性力で建築物は振動している
地震が起きた時、建築物もそれに合わせて上下左右に振動します。でも、戸建ての家にいる時とオフィスで仕事をしている時の地震の揺れの大きさって違いますよね。ニュースでは同じ震度3と報道されているのにどうして、と疑問に思ったことはありませんか。
実は建築物の振動は、地震による慣性力によって起こる現象なのです。慣性力$F$は質量$m$と加速度$a$の掛け算で表現できます。
$$F = - ma$$
車に乗っていて急ブレーキをかけた時に、体が前のめりになりますよね。ブレーキで止まる力と同じ大きさで、逆向きに体に力がかかっているからです。
建築物も同じです。建物の質量に地震の加速度がかかって地震力が発生し、建築物が振動しているということです。なので、構造力学で水平力(地震力)と考えている力は実現象ではなく、わかりやすくするために置き換えているんだと考えてください。
地震といえばナマズくんですね•••
建築物には固有周期がある
振動している固物体には有周期があります。なので、建築物にも当然固有周期はあります。ここでは最も単純な1質点系の通称串団子モデルを考えたいと思います。このモデルは質量無視の棒の上に団子状の質量の塊が載っているモデルで、水平に揺れるとゆらゆらと左右に揺れるというイメージです。
斜線をつけて色を塗ったらチュッパチャップスのようなキャンディにも見えてきました(笑)
え、左の建築物と右の串団子って全然違うんじゃない?
モデルとして大丈夫なの?
部材ごとの固さとか建築物の質量のばらつきがあるから厳密には違うんだけど、設計では大枠をつかむために串団子モデルで考えることが多いよ。
部材が増えると振動の状態がよくわかんなくて、きちんと判断できなくなってしまう危険性があるから、1質点系モデルのほうが使い勝手がいいんだよ。
今回は1質点系で考えていますが、通常は階ごとに1質点を作る多質点系モデルで考えます。
1質点系せん断モデル
1質点系の串団子モデルの固有周期$T$は次の式で表せます。
$$T = 2 \pi \sqrt{\frac{M}{K}}$$
$M$は建築物の質量、$K$は建築物全体の剛性を表しています。つまり、建築物の固有周期は、質量と剛性で決まっていることがわかります。質量が大きく剛性が小さいとゆっくり揺れて、逆に質量が小さく剛性が大きいと小刻みに揺れます。
この固有周期の公式、分母分子どっちが質量だったか、よく迷いますよね。こういう時は実現象で想像してみるのが一番効果的です。
よく、トラックやバスって横揺れしやすいって言いますよね。あるいはたくさん人が乗ったワゴンでも当てはまると思います。逆に、質量が軽いと固有周期が小さくなるので、ほとんど揺れなくなります。
剛性については、ばねで考えたほうがわかりやすいでしょう。固いばねと柔らかいばね、どっちが小刻みに揺れるかゆっくり揺れるか想像してみましょう。
建築の固有周期と高さの関係
それではすべての建築物で、このような質点系モデルから固有周期を求めているかというと、そうではありません。
建築基準法では、一次固有周期という簡易的な計算式が定められていて、大半の建築物はこの式から固有周期を求めています。
$$T = h ( 0.02 + 0.01 \alpha )$$
$h$は建築物の高さ、$\alpha$は鉄筋コンクリート造であれば係数は0、木造や鉄骨造であれば係数は1となります。鉄筋コンクリート造なら$0.02h$、木造や鉄骨造なら$0.03h$と覚えたほうがわかりやすいかもしれません。
この式から固有周期は、建築物の高さが高いほど長くなることがわかります。また、コンクリートより木や鋼材のほうが剛性は低くなる(材料的に柔らかい)ので、木造や鉄骨造の固有周期は鉄筋コンクリート造よりも長くなります。
ただし、この式はあくまで簡易式にすぎません。質点系モデルで考えていたような質量や剛性がいまいち考慮されていないため、実際の揺れ方と異なってくる可能性があります。建築物の規模によっては、質点系などの振動モデルで検証したほうがいいでしょう。
共振現象で建築物は倒壊・損傷する
建築物の固有周期と地震などの外力の周期が一致すると、波が重なって大きく揺れる現象が起こります。これを共振といいます。
これは例え建築物の骨組を安全に作っていても起こります。
兵庫県南部地震(阪神淡路大震災)では、地震の卓越周期が0.5〜1.5秒だったことに対して木造住宅の固有周期が1秒前後なので、甚大な被害が出ました。
一方、東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)では、地震の卓越周期は0.1秒程度だったため、兵庫県南部地震に比べると地震による倒壊の被害はそれほど多くありませんでした。
しかし、代わりに東北地方太平洋沖地震では、超高層ビルの長周期地震動が問題視されました。超高層ビルは固有周期が長くなり、長周期地震動の周期と共振してしまうためです。
長周期地震動によって超高層ビルの骨組そのものは大きな被害を受けませんでしたが、室内の家具や什器が転倒したり大きく揺れたり、エレベーターが故障して中にいた人が閉じ込められたことが問題になりました。
建築物の被害を減らすためには、さまざまな地震動のパターンについて考えないといけないですね。
タコマ橋の事例
たまに共振現象の事例として、アメリカの初代タコマ橋が挙げられることがありますが、実際は共振現象ではなく桁が薄い板状になっていたために横風によって自励振動が起きた、とする説が有力なようです。
いずれにしても、振動に対する設計の配慮が不十分だとこのような橋の崩落が起こってしまうということは教訓にしておきたいですね。
YouTubeなどで当時の衝撃的な動画(当時では珍しくカラーフィルムのものもある)がいくつか公開されているので、確認してみるといいと思います。
まとめ
建築物を地震が来ても安全な耐震構造にするためには、骨組みを頑強にするだけでなく固有周期についても考える必要があります。建築物の固有周期と地震動の卓越周期が重なって共振すれば、甚大な被害を受けることもあるでしょう。
建築物の固有周期を知って、さまざまな地震動のパターンが来ても被害が最小限になるような対策をとっておきたいですね。
最後に関連記事のご紹介です。耐震設計について知りたい人はこちらに記事をまとめています。それでは、また。
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