こんにちは、ゆるカピです。
今回は「安定、不安定構造」について解説します。
あなたは、安定、不安定構造という言葉からどんなイメージが浮かびますか?
心に安らぎを与えてくれるシェルターみたいな建物のイメージかな。危ないところが全くないような。
逆に不安定構造って、身の危険を感じる建物のイメージだよね。そんな建物近づきたくないなあ•••。
世の中にある建物はすべて安定構造物です。しかし、地震や台風などの災害が発生すると倒壊して不安定構造になる建物も出てきます。設計実務では安定構造物を作るために、どうしたら不安定構造物になっていくのかについて考えています。
この記事では、安定構造物と不安定構造物、さらに静定構造物と不静定構造物のそれぞれの違いについてまとめた解説をします。
安定、不安定構造物の違い
不安定構造物とは、外力が作用した時に元の静止状態を保てない構造物のことをいいます。例えば、力が作用した時に簡単に倒壊したり、滑ったりしてしまう構造物です。
逆に、安定構造物は、外力が作用して変形はするものの、元と同じような静止状態が保たれる構造物です。
建築基準法では、建築物を「土地に定着する工作物である」ことを前提にしています。力が作用したら簡単に動いて元の状態に戻らなくなるものは、そもそも建築物として認められていません。
静定、不静定構造物の違い
静定構造物、不静定構造物はどちらも安定構造物ですが、不静定構造物のほうが倒壊するまでの余裕度が高いという違いがあります。
余裕度?なんのこと?と疑問に感じると思います。別の言い方をすると、建物の一部分が壊れても建物が倒壊するまでの余力があるということです。
一方で、静定構造物は一部が壊れたら建物全体が倒壊するような構造体なので余裕度が低いとみることができます。なので、静定構造物に近い建物の設計では、部材の強度や剛性を高めたりして、別のところで建物の余力を持たせています。
構造力学での違い
構造力学では、力のつり合い式($\Sigma H = 0 , \Sigma V = 0 , \Sigma M = 0$)だけで解ける構造物を静定構造物としています。
逆に、つり合い式だけで解けない問題が出てきたら、それは不静定構造物だということになります。不静定構造物の問題を解くには、さらに条件式が必要になってきます。建築士試験でよく出題されるのが、たわみの公式を使う問題です。
たわみについては以下の記事にまとめています。
ほかにも、たわみ角法や固定モーメント法、仮想仕事式などを使って解く方法があります。内容が基礎レベルから外れてしまうので、ここでは触れないこととします。
違いのまとめ
表にまとめるとこんな感じになります。
安定、不安定構造の違いを「安定性の壁」、静定、不静定構造の違いを「冗長性の壁」と表現しています。部材が損傷を受けるに従って、不静定→静定→不安定構造物で倒壊するというイメージです。
構造物の判別方法
取り上げた構造物の違いを判別する方法は、直感に頼るか、判別式を使うかのどちらかになります。ここでは、判別式の紹介をします。
$m > 0$なら不静定構造物、$m = 0$なら静定構造物、$m < 0$なら不安定構造物になります。この$m$のことを不静定次数といったりもします。
符号がいっぱいあって覚えらんないよ〜。
この判別式は参考程度にして、ある程度直感で解けるようにしておくのでもいいと思うよ。
ちなみに、私自身はあまりちゃんと覚えていません。4つ係数があって節点数を2倍して引いとけば答えがわかるでしょ、くらいで十分かもしれません。
とはいえ、判別式を知っておいたほうが安心なのは間違いないでしょう。建築士試験で高得点をとりたいなら、ざっくりでいいと思うので覚えておきましょう。
例題で考える
具体例で考えてみましょう。図のような門型フレームの構造物はどうでしょうか。
まず、支点反力はピンとローラー支点のみなので、反力数の合計は$n = 3$となります。続いて、部材数$s$と節点数$k$はそれぞれ3と4になります。
少し厄介なのが剛節接合部材数$r$です。剛接合になっている箇所を選ぶというものなのですが、これはこういうものだと覚えちゃったほうが早いです。
また、ここで言っている剛接合は支点を含まないので、固定端の支点は選んではいけません。これもよく間違えやすいところです。
今回は$r = 1$となるので計算すると、
$$m = 3 + 3 +1 - 2 \times 4 = -1 < 0$$
となり、不安定構造物であることがわかります。これを筋交いを設けたり支点を固定端としたりすれば、静定構造物や不静定構造物にすることができます。
まとめ
お疲れ様でした。
今回の内容は力学の勉強のなかではあまり目立たないものですが、意外と重要な内容です。実際、建築士試験でも判別式を覚えていないと解きづらい問題も過去に出題されています。
毎回、直感だけで解いていると痛い目を見てしまいます。私自身、就活をしている時に採用のための筆記試験でこの類似問題が出題されて間違えてしまい、その会社に落ちた経験があります。
優先度は低いのは確かですが、覚えていない人はこの機会に覚えちゃいましょう。
それでは、また。
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