こんにちは、ゆるカピ(@yurucapi_san)です。
一級建築士試験の設計製図の受かる図面・落ちる図面ってどこで決まるの?
製図試験って、学科試験と違って明確な答えがないから難しい、って感じてしまいますよね。
今回は受かる図面にするために必要な5つのポイントについて解説したいと思います。
まずは採点基準を確認しよう
実は、毎年一級建築士試験の設計製図の合格発表のタイミングで、試験元から採点のポイントが公開されています。
ここ最近は、建築法規関係や設備計画に関する採点基準が強化されていますが、合格するために必要なポイントは大きく変わっていません。
採点のポイントをしっかり読み解いてエスキス・作図に反映させる。
これは最低限やっておきましょう。
採点のポイントは大まかに以下のとおりです。
ちなみに5番目については、少しでも不適合な箇所があれば即ランクⅣに落とされてしまいます(※ランクⅠにならないと合格できません)。
まあ、クライアントが出してきた要望が全然反映されてなかったら、設計のプロとして失格、ということなんだろうね。
ポイント①:空間構成
採点のポイントでは、建物の配置計画、ゾーニング、動線計画、要求室等の計画、建築物の立体構成等と分類されています。
そのなかでも群を抜いて重要視されているのが太字で書いたゾーニングと動線計画です。
というのも、この2つは採点官からぱっと見の第一印象だけで良し悪しが判断されやすいからです。
わざわざ毎年課題文にも記載されていますし、ここがしっかりできていないとかなり厳しいと思います。
採点全体の半分はみている、なんて話もありますね。
ポイント②:建築計画
自然採光や換気、要求室の機能性など、いろいろ書いていますが、要するに、
人がその施設を快適に利用することを想定した計画をしているか、
がポイントになります。
- 自然光が入らず空調設備もない無窓居室
- 夏場暑くて、冬場寒い施設
こういう計画は減点対象。
以下の改善策がおすすめです。
- 開閉式のトップライトを計画
- 倉庫、設備諸室以外は外部に面した位置に計画
- 上下の流れを作るために2層の吹き抜け空間を計画
定番ですが、上記3つは積極的に取り入れるようにしましょう。
断面図はトップライトを含めて切り取った位置で描くようにすると、計画の要点や補足説明でアピールできておすすめ!
自然採光、換気システムは、トップライトのほかには、ハイサイドライトがあります。ただし、雨仕舞いも含めた納まりが難しく、断面図が描きづらいのであまりおすすめできません。
ポイント③:構造計画
構造計画の採点のポイントは以下のとおり。
- 耐震性・経済性を考慮した構造種別、架構形式、基礎形式、スパン割
- 大空間の構造計画
- 地下の構造計画
- 重量物が載る箇所(屋上庭園など)の構造計画
- 大きめの床開口の補強計画
3,4番目は出題年度によって変わりますが中身は共通です。
構造種別、架構形式、基礎形式、スパン割
特に決まりはありませんが製図試験に関して言えば、
- 構造種別:鉄筋コンクリート造(通称RC造)
- 架構形式:ラーメン構造
- 基礎形式:ベタ基礎
- スパン割:7×7が標準
とするのが一般的です。
構造種別をRC造にする理由は以下の記事が参考になります。
関連記事 » 【一級製図】RC造で設計する理由
大空間の構造計画
多目的ホールなどの大スパン空間は、一般的にプレストレストコンクリート(PC)梁で計画します。柱サイズは800×800にするなど、ほかの柱よりサイズアップしておきましょう。
ポイント④:設備計画
空調方式、受水槽の計画、キュービクルの計画などの標準的な寸法、設置可能な場所などは事前にチェックしておきましょう。
テキストで読んだだけではよくわからないと思うので、普段から廊下や階段付近にある配線・配管ルートや実際の設備機器を確認しておくのがおすすめです。
設備の位置関係を普段から見るようにしてると、エスキスで役に立つよ。
私の場合、設備起因の梁貫通・耐震壁開口・床開口は構造計画に関わる重要性の高い内容なので、普段から設備図は確認するようにしています。
設備図面は見上げ図になっていたりと、慣れてないと少々読み取りづらいところはあります。しかし、設計実務をやっているなら無料で情報が手に入ったりするので、一度は見る勉強をしておくとなにかと役に立ちますよ。
ポイント⑤:設計条件・要求図面等に対する重大な不適合
- 図面や要点記述で未完成部分がある
- 階数が要求しているものと異なっている
- 上下階の不整合や階段やエレベータなどが欠落している
- 要求されている建蔽率・容積率を超過している
- 要求室・施設などが欠落している
- 法令に明らかに適合していない計画をしている
これらのいずれかに当てはまっていたら一発アウトです。現実は厳しいですね。
自分は大丈夫と思ってたら意外と間違えてしまった、なんてことは製図の勉強をしていたら何度か経験すると思います。
自分を過信しないように、必ず3回は課題文の内容確認の時間を作っておこう。
どんな対策を立てたらいいか
以上の採点のポイントをふまえた対策方法は以下のとおりです。
順番に説明します。
ゾーニングと動線計画を基準にエスキスする
試験の課題文を読むだけだと、エスキス案が無限に出てくるように錯覚してしまいますが、実際は違います。
- 建物の配置、アプローチ計画
- ゾーニング
- 動線計画
- 要求室の面積、個数
大抵の場合、これらの条件でおおよそエスキスの方向性は決まります。
本試験の設計製図では必ずなんらかの誘導をしてきます。
特定の建物形状にしないとうまく納まらなかったり、アプローチ計画からの動線計画が一位的に決まったりすることがよくあります。
この誘導に気づけるかどうかはエスキス練習量によるので、普段からエスキス練習をやっておくようにしましょう。
作図練習は平行定規が必要だけど、エスキス練習はちょっとしたメモ用紙でも練習になるよ。1/1,000スケールくらいのチビコマでたくさん練習しよう!
最低限の法令関係の知識をおさえておく
今年は「高齢者介護施設」だからバリフリ関連の法規の勉強はしっかりやっておかないとね。
•••と考えているかもしれません。
- 廊下幅、車椅子の転回スペース
- 屋内、屋外のスロープ
- 車椅子利用者用の駐車スペース
これらの寸法は本試験で間違えないように繰り返し作図の練習をしておくといいでしょう。
そのほか、延焼ラインや吹き抜け部分の区画など防火区画に関する知識も忘れずに。
構造、設備に関する基礎知識をマスターしておく
構造に関しては、大多数の人がRC造ラーメン構造を選択することになると思うので、鉄筋コンクリート造の基礎知識を勉強しておきましょう。
参考記事 » 【一級製図】RC造で設計する理由
設備に関しても、必要最低限レベルの、設備機器やDS・PS・EPSの役割と配置計画に関する知識をおさえておけばとりあえずはOK。
ただし、テキストや参考書を読んだだけで終わらず、実際に手を動かして練習するようにしてください。手を動かすと自分の理解度が肌で感じとれますし、失敗にも気づけるはずです。
たくさんエスキスと作図の練習をしましょう。
おまけ:図面と要点記述の見た目は意識しよう
設計製図の採点のポイントには、図面のきれいさは求められていません。特段図面の美的センスは求められていないことがわかります。
関連記事 » 【一級製図】受かるのは運ゲー!?受かるためのポイント3選
設計製図の試験は基本的に、
図面の見た目のきれいさより、スピード重視、
です。
じゃあ、採点のポイントを満たしていたら、どんなに雑な図面でも受かるの?
という疑問が浮かんでくると思います。
これについて、理屈上はYESになりますが、実際確認しようがないためなんとも言えません。
ただし、設計製図は生身の人が採点しています。
- 図面が汚い、字が汚くて読めない
- 図面が薄くて読み取りづらい
こんな評価を受けてしまうと、いつも以上に疑いの目をもって厳しめに採点される可能性は高まるでしょう。
読みにくい図面だと、全然読み手に対する配慮がなってないなあ。
図面や要点記述は一種のコミュニケーションツールです。相手に対する配慮ができてこそ、立派な建築士といえるのではないでしょうか。
逆にきれいに書ける人はそれだけで心象がいいね。字が下手で自信がない人は、殴り書きで読めない字にならないように練習しておこう。
まとめ
今回は製図試験の合格基準となる採点のポイントを少し掘り下げて解説してみました。
対策方法としては以下の3つ。
製図試験の採点のポイントをあまり意識してなかったな、という人はもう一度合格基準の確認をしておきましょう。
それでは、また。
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