こんにちは、ゆるカピ(@yurucapi_san)です。
最近会社でRPAが導入されたんだけど、将来的に建築士の仕事がなくなることってあるの?
ここ数年、建築業界にもICT技術を取り入れる流れが出てきています。
今は建設現場にICT技術を取り入れる試みのほうが主流ですが、設計作業についても今後5年くらいで一気に自動化の流れが来ると考えられます。
それでは、建築士の仕事は今後AIに奪われてしまうのでしょうか?
今回はこの辺りについて考察していきたいと思います。
私の簡単なプロフィールです。
結論から言うと、設計の仕事はなくなりません。理由は以下のとおりです。
単純なCAD編集作業や一貫計算プログラムの入出力作業は今後自動化されていくと予想されます。
一方で、クライアントとのこまめなやり取りや行政との折衝は依然として残るので、設計者の仕事がなくなることはありません。
とはいえ、設計する内容は変わってきます。
時代の変化についていけるか不安...。
こんな悩みを抱えている人は少なくないと思います。
この記事では、
- 建築業界がなぜICT技術導入に本腰を入れるのか
- 今後の設計者の未来はどうなるのか
- どんな対策をしたらいいのか
に焦点を当てて解説していきます。
建築業界がICT技術を取り入れる理由
建築業界がここ数年でICT技術を取り入れる理由は次のとおりです。
- 慢性的な人手不足
- 労務単価の高騰
- 働き方改革に伴う労働時間減少
慢性的な人手不足
現在、少子高齢化の影響で労働生産人口が減少しています。当然、建築業界でも現場の職人さんや設計従事者の人手不足が深刻な状況にあります。
また、一級建築士資格保持者の高齢化についても問題視されています。
公益財団法人建築技術教育普及センターによると、平成31年4月1日時点の建築士の登録者数は次のようになっています。
- 一級建築士 373,490人
- 二級建築士 771,246人
- 木造建築士 18,133人
- 構造設計一級建築士 9,986人
- 設備設計一級建築士 5,448人
ただし、この登録者数は亡くなられた方や資格を剥奪された方も番号はそのままになっていますし、重複して登録している人も多数います。
実際に建築士として活動しているのはこのうちの10%くらいともいわれています。
また、少し古い情報になりますが平成17年時点の年代ごとの一級建築士の登録者数は次のようになっています。
(国土交通省の平成18年の分科会資料(PDF注意)より引用)
年代 | 一級建築士建築士の登録者数 |
---|---|
20代 | 約2,000人 |
30代 | 約47,000人 |
40代 | 約66,000人 |
50代 | 約101,000人 |
60代 | 約106,000人 |
一級建築士試験の受験者数も年々減少傾向にあるため、今後はますます建築士の高齢化による人手不足が進行することが予想されます。
労務単価の高騰
労務単価とは、公共工事の入札で予定価格の算出などに使う人件費のことです。
国土交通省の報道発表資料(令和2年2月、PDF注意)によると、とび工や鉄筋工などの建設作業に必要な主要12職種の公共工事設計労務単価の平均値は、年々上昇していることがわかります。令和2年度時点で20,000円の最高値を更新しました。
なお、グラフには表れていませんが、設計や測量、地質調査などの技術者単価も上昇しています。
ゼネコンとしても、なるべく人件費を抑えたいのが本音ではないでしょうか。
働き方改革に伴う労働時間減少
2020年4月から、時間外労働への罰則付き上限規則が中小企業にも適用されるようになりました。建設業に対しては5年の猶予が与えられて2024年から施行されます。
遅くとも2024年までには働き方を抜本的に見直さないといけないんだよ。
まだ4年あるとも言えるし、あと4年しかないとも言えるね。
残業時間の上限は原則として月45時間、年間360時間となり、今まで以上に効率的に働く必要性が出てきました。
もともと、建設業は他業種に比べて年間実労働時間が長い傾向にあります。慢性的に残業過多な体質なので、ICT技術を積極的に取り入れてなんとか解消していきたい、という考えがあるようです。
今後はどうなる!?設計者の未来を考える
それでは今後、設計者にはどんな未来が待ち受けているのか、考えてみたいと思います。
私の個人的な予想になりますが、以下の3つのシナリオを想定しています。
シナリオ1
シナリオ1は、今現在積極的に取り組んでいる一部のゼネコンや大手設計事務所の補助的な業務としてのみ、AIが活用されるケースです。
設計のAI化が実現できるのは一部の体力のある企業のみで、大多数のゼネコンや設計事務所はあくまで人力で業務をこなしていくという未来が考えられます。
昨今の状況でそんなことってあり得るの?
と思うかもしれません。
今でこそ手描き図面はほとんど見かけなくなりましたが、ほんの15年ほど前の竣工図面だと、図面や計算書が手書きだったりします。
BIMについても、日本で導入の話が出始めた2009年(BIM元年とされている)から約10年が経過して、ようやくある程度かたちになってきた感があります。
中小規模の設計事務所でも一般的に扱うようになるのは、少なくともあと5年はかかりそうという印象を受けます。
人は変化を嫌う傾向にあります。
BIMがようやく受け入れられ始めた段階なので、設計のAI化が受け入れられるようになるのはもっと先、と考えたほうがいいかもしれません。
シナリオ2
シナリオ2は、部分的に設計のAI化が進むケースを想定しています。
ここでは、革新的で汎用性のあるICT技術に関するツールが開発されることが鍵となります。
例えば、過去の話で言うと、
- 汎用性のあるCADソフトの登場(JW-CAD、AutoCAD、VectorWorksなど)
- 一貫構造計算プログラムの登場(Super Build/SS7、SEIN La CREA、BUS6、ASCAL、BUILD.一貫Vなど)
などの汎用ソフトが登場して、今では業界では当たり前の存在になっています。
会社独自のプログラムだけでなく、汎用性のあるプログラムが普及し始めると、一気に設計のAI化が加速するでしょう。
CADやBIMのように海外輸入で発展する場合や、一貫構造計算プログラムのように日本独自のガラパゴスで発展する場合の両方が考えられます。
そうなったら、ついていけない人が続出しそうだね。
今のCADや一貫構造計算でもそうだけど、ついていけない人はいずれ淘汰されていくのかもしれないね。
シナリオ3
最後に、設計の大部分でAI化が浸透するケースについて考えます。
いわゆる強いAIが台頭して、これまでやってきた設計作業の大半をAIが賄ってしまう未来を想定しています。
自分のやってる仕事がなくなるんじゃないかと不安になるのは、このレベルの話なんじゃないかな。
強いAIについては以下の記事で触れているので、参考にどうぞ。
- これまでの膨大な設計データベースがある
- AIがある程度自律的に設計を進めることができる
これらが組み合わさって強いAIが設計をするようになると、今までの設計者の職能が揺らいできます。なかには強いAIの行う設計内容に、盲目的に従う人が出てくると考えられます。
AIはひとつの判断材料、ただのツールにすぎない。
そう割り切った考えでAIと向き合いながら設計を進められるかが今後問われるようになるでしょう。
どんな対策が必要?今後のキャリア戦略を考える
こんな感じで、ある種楽観的なシナリオ1から悲観的なシナリオ3まで考えてみました。
若干妄想が入ってますが、シナリオ2レベルは十分あり得そう、シナリオ3レベルもひょっとしたらあるかも、と思っています。
なんとなーくですけどね...。
なので、ここではシナリオ2とシナリオ3あたりを想定して、今後どんなキャリア戦略をしていったらいいか解説します。
将来が不安な設計者がとるべき未来の戦略は、
- コンサルティング系に注力する
- 地域ごとのマーケティングに注力する
- AIやBIMを開発、メンテナンスする側に回る
- 代わりのきかない設計者を目指す
のいずれかの生き方を選ぶことになります。
1.と2.は若干似ていますが、戦うフィールドが違うので分けて表記しています。
コンサルティング系に注力する
設計のAI化、一般化が進めば、いずれはクライアント自身が設計案を出してくる時代が到来します。
それでもなお、クライアントは設計者に協力を求めてくる、と考えています。
設計案は、パズルを組み合わせるような感じで簡単に作れてしまうかもしれません。しかし、最終的にはその道のプロの視点がないと不安な気持ちになるのが人間の心理です。
過去の実績をもとに、AIも駆使しながらさまざまな角度から提案ができるコンサルタントは重宝されるでしょう。
今のうちに、
- プレゼンテーション力
- コミュニケーション力
をしっかり身に付けておきましょう。
地域ごとのマーケティングに注力する
昨今の社会情勢に合わせて、地方移住を考えている人もいるのではないでしょうか。
そんな人には地方の設計事務所や地場ゼネコン、地方創生に力を入れている会社に就職してマーケティング力を身につけていく生き方もおすすめです。
建築というコンテンツを使って、その地域の課題を解決していく。
実績を積み上げていけば、ほかの地域からもオファーが来るようになって、あなたの活躍の幅も広がっていくはずです。
フットワーク軽めでいろんな人と交流したい人には特におすすめかな。
AIやBIMを開発、メンテナンスする側に回る
AIに奪われない生き方というと、対人関係が求められたりクリエイティブな仕事が取り上げられたりします。
一方で、AIやBIMに関するツールやプラグインを開発したり、メンテナンスする仕事については、人とのコミュニケーションはそこまで求められません。
いわゆる、AIを使う側に回るのもひとつの選択肢です。
建築系とIT系の両方に精通している人は貴重な存在だから、職にあぶれることはないよ。
え、でもBIMの使い方とかあんまりよくわかんないよ。
Udemyというオンライン学習サービスを使えば、その辺の勉強はできるよ。まずはBIMの勉強をしてみるのもいいかも。
Udemyはオンラインの動画学習サービスで、今注目されているプラットフォームです。
スマホにダウンロードしていつでも学習でき、一部無料のものもあるので登録しておいて損はありません。
ビジネススキルを身につけるために必要なことはだいたい学べます。もちろん、建築のBIM講座もありますよ。
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代わりのきかない設計者を目指す
〇〇と言えばこの人だね、と言われるような設計者を目指すのもひとつの戦略です。
例えば、
- 紙の建築と言えば、坂茂
- 木を使って今風の建築と言えば、隈研吾
- コンクリート打放しと言えば、安藤忠雄
のようなイメージです。
とはいえ、その道の第1人者かつ他者の追随を許さない人になるのはなかなか難しいのが現実です。
先ほど挙げた1〜3の例を組み合わせつつ、いろいろなジャンルに挑戦してみてどれかヒットすれば伸ばしていく、という感じでいいと思います。
たくさん失敗しながら、たくさん挑戦しよう!
まとめ:まずは一歩踏み出してみよう
今回は若干ネガティブな話もありましたが、働き手の負担低減のためにはAIの導入は避けて通れない道です。
導入しないと、建築業界を維持できなくなるからね。
今回の記事を読んで、なにか一歩踏み出したいと考えているなら、今一度、自分のキャリアについて考えてみるといいでしょう。
今回提示したキャリア戦略はあくまで一例なので、組み合わせたり細分化したりして自分に合ったものに変えてみるのもアリです。
自分の道は自分自身の手で切り拓いていきましょう!
それでは、また。
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